青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
阿呆なノリをここまで淡々と笑いなしで進められてしまうとは。
やはりノリは相手によってアップダウンが激しいものだとヨウは思って仕方がない。
自分と舎弟だったらこのまま阿呆の極みまで達するというのに。
つまらないとヨウは溜息をついた。
具合が悪いのならばメールを控えるべきなのだろうけれど、ついつい新規メールを開き、ボタンに指を掛けてしまう。
一言、大丈夫かメールを送ってみると、授業中に返信があり、『地獄に行っているんだぜ!』という文面が返ってきた。
大丈夫そうじゃないか、笑いを噛み殺してしまう。
明日には来れるんじゃないか、そう内心で思いながらヨウはそれ以上のメールを控えることにする。
授業中だというのもあるのだが(それ以前に授業など念頭にない)、相手の体調を考えてメールは遠慮したのだ。
文面では気丈に振舞っていても、実際には地獄に行ってしまいたくなるほどしんどいのかもしれない。
午前中、殆ど寝て過ごしたヨウは昼休みになるとワタルのいる教室に赴いた。
「ワータル」
いつもの場所に行こうぜ、相手を誘い体育館裏へ。
途中売店で飯を調達することを忘れない。
お目当てのヤキソバパンを買えたことにご満悦していると、ワタルが舎弟の行方を聞いてくる。
休みだと答えれば、「また?」ワタルが落胆してみせた。
調子ノリがいないとノリがイマイチではないか、文句垂れてくる始末。
ご尤もだが自分に八つ当たりされても困るもの。
病欠している本人直談判してもらいたい、ヨウは素っ気無く返した。
次いで、ワタルにここ数日は襲われていないかどうか質問する。
ワタルを執拗に追い回していた輩は、わざわざ向こうから出向いてくれた。
おかげさまで探す手間も省け、難なく事件は解決したが呆気ない終わりにヨウは釈然としない気持ちを抱いている。
過剰なまでに不安になっていた舎弟にはああ言ったが、自分だってワタルの一件に不可解な気持ちを抱いてはいたのだ。
けれど舎弟の前で言えば不安が余計不安を呼んでしまい、動揺を引き起こしてしまう。
あまり波立てて言わなかったのは、そういう意味合いがあったのだ。
過小評価してしまいがちな舎弟の悪い癖をどうすればいいのか、舎兄の自分でもイマイチまだ分からなかったりする。
自己嫌悪していたら背中を蹴っ飛ばしてやる。
それが最善の策だとは思っているのだが。
人は簡単には変われないものだ。
話は戻り、ワタルはヨウの質問に大丈夫だと肩を竦める。
見られている気配がする時もあるが、今のところ襲われてはいないらしい。
それは大丈夫に当てはまるのか、ヨウは苦笑してしまう。