青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


パァッとオーラに花を散らすキヨタに、モトとヨウは「……」である。

それは彼女の立ち位置にいるココロの役目ではないだろうか。


しかし二人のツッコミは聞こえていないらしい。

そうと決まれば、早速何本見舞い品として持って行こうか…、うーんっと唸るキヨタは真剣に悩み始める。

 
「ビタミンが足りていないからレモンの炭酸にするべきか。
いや、此処は王道にサイダーで貫くか。コーラは胃に負担が掛かりそう、色的に。野菜ジュースもいいけど、ケイさん嫌いだもんなぁ」


「………」

「……、まだか? キヨタ」


「モト! 俺っちは真剣なんだぞ! 選ぶ時間は重要だ!」
 

もはや何を言っても聞かないだろう。

だったらせめて彼女は連れてってやれよ、と後で声を掛けておこう。


ヨウは微苦笑し、キヨタの様子を見守ることにした。

あれこれ悩んでいるキヨタを眺めていること数分、ようやく納得する結論が出たのか、キヨタは迷っていたジュースは全部買ってしまうと五本ほど500mlのペットボトルを腕に抱えてしまう。


大層呆れたのはヨウだけではないだろう。

モトも買い過ぎだとツッコむが、本人はいたって真剣らしい。


「モトだって」


ヨウさんが風邪ひいたら全部買うだろ?

キヨタがクエッションすると、即答で当たり前だとモト。


ジュースだけでなく、体が温まりそうなものを買うと断言した。

よってヨウは溜息をついたりつかなかったりである。


風邪はひけないな、と思った瞬間でもあった。
 

無事に飲み物を調達した三人はスーパーを出てたむろ場に戻ることにする。

キヨタが差し入れを渡しに行くというので、どうせなら彼女も差し入れとして連れて行こうと考えたのだ。

ちなみにヨウもついていく気満々である。

彼女を差し入れとして連れて行った時の間抜けな舎弟の顔を見たかった。


もし舎弟が玄関に現れなくても、それはそれで暇つぶしになったと前向きに考えれば良し。

後日、彼女を連れて行ったことを話し舎弟を悔しがらせてやろうと思った。


駐車場を抜けてスーパーの敷地を出た時である。


何処からともなく女性の悲鳴が聞こえた。野次馬魂がくすぐられ、ヨウはつい足を止めてそちらに視線を流した。

よって後輩達も足を止める。

揃って声の方を見やれば、傘を放り投げて尻餅をついている中年女性がいた。どうやら濡れたマンホールによって足を滑らせたらしい。


折角買った品物も雨のせいで濡れ始めている。


ダサいと後輩達が口を揃えた。

ヨウも相手が見知らぬ人物ならば、同じことを漏らしてしまっただろう。

けれど相手は見知った人物だった。ゆえにヨウは駆け足で女性のところに向かう。
  
< 586 / 804 >

この作品をシェア

pagetop