青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「おばちゃん。大丈夫か?」
傘を差し出しながら、ヨウは相手に声を掛ける。
「あら」庸一くんじゃない、恥ずかしいところを見られてしまったと女性は苦笑い。
中年女性は自分がいつも世話になっているケイの母親だった。
大丈夫だと頬を掻くケイの母親は、買った代物を拾い始める。
ヨウもそれを手伝い、「雨ってヤだよな」彼女の失敗を雨のせいにして肩を竦めた。
ほんとに。頷くケイの母親は、遅れて手伝い始めるモトとキヨタに「まあ優しい」と綻んだ。
後輩達は先輩が手伝っているから手伝っているまでなのだが、ヨウが女性の正体を明かせば、
「うぇえ?!」
ケイさんのお母ちゃん?!
頓狂な声音を上げたキヨタ。
これは挨拶をしておかなければ、身を硬直させながら初めましてとキヨタは元気よく挨拶する。
いつも先輩にお世話になっています、なんて声を張っていた。
目をぱちくりさせるケイの母親は、「ああ。あの清隆くんね」と頬を崩す。
「圭太から聞いているの。村井清隆くんでしょ。圭太が弟みたいで可愛いって言ってたわ。ということは、貴方は嘉藤基樹くんかしら? 庸一くんからよく聞いているのよ。弟みたいで可愛いって」
「うっわぁああ! 光栄っス! し、知って下さっているなんて! け、ケイさん俺っちのことっ、くぅう、感激っス!」
「よ、ヨウさん! ケイのお母さんに何を言ったんですか?!」
大興奮するキヨタと焦るモトに一笑し、「おばちゃん怪我は?」ヨウは話を振る。
尻餅をついただけだから大丈夫。そう告げたケイの母が、やっぱり大丈夫じゃないと嘆いたのはこの直後。
「そんなっ」
卵が全滅しているなんてっ、一個くらい助かっていてくれても良いじゃないかと大ショックを受けている。
「ちょ、ちょっと奮発してお高めの卵を買ったのに!
っ…、この卵の値段、レンタル店で韓ドラの新作DVDを借りるに匹敵する高さだったのに!
こんなことなら、安い卵を買って普通にドラマを借りるべきだったわ! 私の我慢がこんな形で仇返しされるなんてっ! ショックっ、大ショックよ!」
「あー…おばちゃん」
「最近ついていないの。きっといとしの静馬くんがいなくなってからだわ。目の保養がなくなったのよ。息子達が悪いってわけじゃないの。
ただ静馬くんはおばさんの癒しだったから。
庸一くんと静馬くんが我が家にいる日には両手に花、両手にイケメンだったのに」