青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「それと静馬くんに言付けをお願いできる? 圭太が押しかけているみたいでごめんね。明日には追い返していいからって」
え?
目を丸くする三人を余所に、「泊まりに行っているのよ」まだ忙しいだろうにあの子ったら、ケイの母親は憮然と吐息をつき、シズへの言付けを頼んでくる。
今なんと言った?
ケイがシズの家に泊まりに行っている?
そんな馬鹿な。
ケイは体調不良で休んでいる筈では?
チーム内でも体調不良で通っているのだが。
絶句するヨウ達に気付かずケイの母親はお願いすると目尻を下げ、車に爪先を向けた。
「なあ、おばちゃん!」
ヨウがケイの母親を呼び止める。
不思議そうに振り返る彼女に、いつからケイは泊まりに行っているのだと質問する。
二日前だと返答したケイの母、メールを伝って泊まりの連絡が入ったらしい。
明日には帰ってくるようメールしておくからと一笑し、その場を去ってしまう。
手を振ってくるケイの母に手を振り返し、そしてその手を下げられぬまま、ヨウはどうなっているのだと目を白黒させた。
何故、ケイがシズの家に泊まっているということになっているのだろうか。
自分達には仮病を使い、母親には泊まりの嘘を使う。
メールでは大丈夫、寝ている、まだ熱があると返信していたケイが自分達に嘘をついた。
そして二日前から家には不在。
ケイは安易に嘘をつくような奴ではない。それは知っている。
嫌な予感がした。
「ケイさん…、どうして俺っち達に嘘を」
困惑するキヨタは買ったジュースを見やりながら自分達に意見を求める。そんなの自分達にだって分かるわけない。
ヨウは二人に戻ろうと告げ、濡れたアスファルトを蹴って駆け出した。
傘を投げ出して走り出すヨウに後輩達は、それを持つよう声音を張るのだが、耳には一切入らない。
吐き気のする胸騒ぎだけが胸を占めた。
「シズ! シズっ…、静馬!」
全力疾走、転がるようにたむろ場に戻ったヨウは濡れた体に構うことなくシズを呼んで詰め寄った。
傘も持たず倉庫に飛び込んできたこと、そして顔面蒼白しているヨウの面持ちに転寝をしていたシズは目を見張る。