青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
『だい…じょ…、ま…てる』
だい…じょ…、ま…てる。
意味の通じない言葉のように思えるが、ヨウには伝わる。
ケイは待っているのだ、自分達の助けを。
大丈夫だと言いたいのだ、大丈夫じゃないくせに、大丈夫と告げて仲間を安心させたいのだ。
嗚呼、どうしょうもない負けず嫌いの見栄っ張りだ自分の舎弟は。
『ふふっ…、おまえ…の、かちだ…ヨウ。おまえ…、まけ…ちゃない』
「ケイ…っ、お前」
『だって…っ、あいつら…はっ…、おまえをっ…みくびって…』
次の瞬間悲鳴が聞こえた。
それは断末魔のような、鋭い悲鳴。心臓がえぐれるような錯覚を覚える。
機具越しから『彼女と電話させてあげようと思ったら』駄目じゃないか、そういう反則は…と軽快な声音が聞こえた。
多分首謀者と思われる。
「おいテメェ!」
首謀者に呼びかけてみるが相手は取り合おうせず、無情にも電話が切られてしまった。
ココロの携帯を握り締め、腕を垂らしたヨウは怒りのあまりに戦慄く。
「ヨウさん」
モトがそっと声を掛けるが反応はできない。
ただただ唇が噛み切れるまで、その下唇を噛み締める。
やがてヨウは鉄の味を感じながら、「シラミ潰しに行くぞ」とだけ言い踵返した。
相手が大丈夫だと言った。
ならば、ならばっ…、自分もまだ大丈夫だと言わなければ。迎えに行かなければ。
目的はただひとつ、ゲームの勝敗ではなく仲間の奪還。
例えこのゲームに負けた事実があったとしても、自分達にはまだやるべきことがある。あるのだ。
敗北に悔しがっている暇などない。場所移動させられる前に仲間を迎えに行く。
手に入れた情報のすべてを活かし、自分達は動かなければならないのだ。