青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
すると。
「なにが…あっても。おれ」
舎弟が雨に顔を濡らしたまま、シャツから手を放し、その手を伸ばしてくる。
「もど…、て…、おれは、おまえ…の」
力尽き、瞬く間に落ちるその手を掴んで握り締め、今しばらくヨウは感情を押し殺した。
「ああっ、お前は俺の大事な舎弟だ。テメェは戻って来る。戻って来てくれねぇと俺が困るよ。―――…誰よりも信じてっから」
不意に心身傷付いた舎弟をその場に寝かせ、自分のブレザーを脱ぐ。
濡れて脱ぎにくいが無理やりブレザーを脱ぎ、それを畳んでしまうと頭に敷いてやった。
濡れて気持ち悪いだろうがこれ以上、硬いアスファルトに寝かせるわけにはいかない。
これ以上、舎弟を傷付けるなど舎兄の自分が許さない。許さないのだ。
「ヨウ、此処にいたのかっ。どれだけ…、捜したと……ケイ」
背後から聞こえてくる副リーダーの声。
自分の姿を捜していたのだろう。文句を言おうとしていた言葉は途中で雨に溶け消える。
「シズ。ペンチ用意できっか?」
ケイが手錠に繋がれている。
ペンチでどうにか鎖を切って連れて帰ると告げた。
頷くシズはすぐに仲間に連絡すると言い、踵返した。
去って行くシズを見やることもなく、ヨウは四肢を投げて眠りについているケイの手を握り、こうべを垂らす。
「安心しろケイ。この仇っ、必ず…、取ってきてやっからっ…、だからっ…、俺はテメェの舎兄だ…っ、必ず仇は取ってきてやる」
嗚咽が漏れる。
「あめだ」
本当に酷い雨だな、雨なんて大嫌いだ、今日でワーストに入るほど嫌いになった、ヨウはうわ言のように繰り返し、雨と共に感情を零した。
今日の雨は冷たい。
今まで感じたことないくらいに冷たい、冷たい、つめたいのだ。
「今だけ、弱い俺でいさせてくれ。テメェなら、許してくれるだろ? ―…なあ、ケイ?」