青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「―――…ほんっとタフさだけは一丁前だよ。こいつ。いつもそうだ。リンチされようがフルボッコされようが、根性見せやがる。動けるカラダじゃねぇくせに」
 
 
毛布を肩上まで掛けたヨウは苦笑いを零し、気を失った舎弟を見つめる。
 
荒呼吸を繰り返している舎弟の顔色は湯上りのように赤く、生々しい傷も目立つ。

熱帯びた体を冷やすために、額には冷却ジェルシートが貼られているが効果はなしていないようだ。

ひゅっと喉を鳴らして熱に魘されている。


時折うわ言を漏らすが、聞き取れることは少ない。


心身弱っている舎弟の体温はどれほどのものか、傍にいて看病してくれているココロに尋ねると、「九度五分でした」彼女は眉を下げて教えてくれた。


念のためにもう一度計ってみる。

家から持参した耳式体温計を取り出すココロが、舎弟の耳にそれを当て体温を測る。

音が鳴り、彼女が体温を確認。表情を曇らせた。
 

「九度八分。また熱が上がりました。ただの風邪じゃないのかもしれません」
 

四十度近い体温にココロは悲しげな表情をするものの気丈に振る舞い、

「ここは私が」

ヨウさん達は話し合いに戻られて下さい、と促してくる。

心遣いに甘んじ、「行くぞ」後輩達に声を掛けてヨウは踵返した。

キヨタとモトは顔を見合わせ、返事してリーダーの背中を追う。


「ケイさん」


首を捻って舎兄の心配をするキヨタに、モトは何も言わず肩に手を置き、その荒んでいる感情を慰めた。

窓からはまだ絶え間ない雨音が聞こえている。
 



ケイ奪還に成功したヨウは(果たして成功といえるのか)、現在進行形で、仲間達と共に副リーダーの住居に邪魔している。

まさかこんな形で一人暮らしとなったシズの部屋(1DKの洋式アパート/二階の一室)に邪魔するとは想定すらしていなかったが、負傷したケイを休ませる最適の場所だと言える。


あの後、ヨウは舎弟の手首に繋がれている手錠の鎖をペンチで切り、副リーダーと共に浅倉チームのたむろ場に戻った。


酷く弱っている舎弟を一刻も早く病院に連れて行きたかったのだが、濡れた体を見過ごすわけには行かず、一先ず気兼ねなく邪魔できるシズの部屋へ。


そこで応急処置と着替えをさせベッドで休ませている。

各々制服が濡れていたため、自宅に戻るなり、持っていたジャージを着るなりして対処。
 

そうこうしている内に夜が更けてしまったため、明日にケイを病院に連れて行こうと判断した。今は本人もゆっくり休みたいだろうから。


< 608 / 804 >

この作品をシェア

pagetop