青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
一日くらいシズの部屋で休ませても大丈夫だろう。
彼の両親も泊まりだと思っているだろうから。
ただ明日病院に連れて行くことで、きっと彼が喧嘩に巻き込まれたことを察するだろう。聡い親だから。
世話になっている彼の両親を悲しませたくはないが、誤魔化しは通用しないだろう。
「ケイ、大丈夫そう?」
向こうのテーブルに着いて様子を見守っていた弥生が、そっと声を掛けてくる。
ジャージ姿の彼女に無言で肩を竦めるヨウは、壁側に腰を下ろし、窓際に備えてあるベッドに視線を送った。
大丈夫だとは到底言い切れないだろう、あの様子じゃ。
必死にココロが看病をしているが、弱りきっているとしか言いようがない。
「煙草いいか?」
部屋の主に質問しつつ、煙草を取り出すヨウ。
既に自分は煙草を吸っているのだけれど、ワタルがおどけたため、遠慮なく煙草を吸うことにする。
とにかく精神安定剤が欲しい。それが体に害があろうと、気分を落ち着けたいのだ。
煙草に火を点けたヨウは、シズの部屋をぐるっと見渡す。
まだダンボールが数個見受けられている。引越しの片付けは終わっていないようだ。
やや部屋が狭く思える。
しかもこの密集度だ。部屋にはチームメート全員が揃っているプラス、間接的チームメートの利二がいるものだから、余計狭さが強調されているように思えて仕方がない。
ヨウ自身チームメートは自宅に帰すつもりだったが(自分は部屋に残るつもりだった)、皆、此処に残るといって聞かなかったのだ。
ゲームと名目した勝負のこともある。
敗北してしまった勝負に悔しさはなく、寧ろ気持ちは仲間を痛めつけてくれた首謀者に矛先が向いていた。
(よくもケイを…っ)
煙草の先端を噛み締め、ヨウは荒々しく紫煙を吐いた。
この落とし前は必ずつける。
必ず相手の正体を暴く。
必ず仇を取る。
荒川に喧嘩を売ったこと、死ぬほど後悔させてやる。
ギラついた眼光を瞳に宿らせていたヨウは、響子に声を掛けられ我に返った。
クッキーの空き缶に灰を落とし、視線を彼女に向ける。
物言いたげな表情を浮かべる響子は染めたフロンズレッドの髪を耳に掛け、「これからどうする?」当たり障りのない言葉を掛けてきた。