青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


事件が起きる前日にケイは自分に相談しようとしていたのか。

ということは迷惑メールの不審に誰よりも早く気付いていたということなのか。


きっとケイのことだ。


口頭での説明が思いつかず、翌日自分達に会って直接相談しようと決めていたのだろう。


けれどケイは翌日の朝に…、本人もまさか朝一に奇襲されるとは思っていなかったに違いない。

もしもこのメールが自分に届いていたら、きっと展開は変わっていただろう。

途中まで綴られている文面に奥歯を噛み締め、返答を待っている仲間に手掛かりとなるものはなにもないと告げて携帯を閉じる。

過ぎた過去をどうこう言っても仕方がない。今は前を見ることに専念しよう。
 

「あ、そういや」


ヨウは思い出したように腰を上げ、脱ぎ捨てていた自分のブレザーのポケットからケイの生徒手帳を取り出した。

失神する間際、ケイが自分に手渡した代物だ。何が何でもこれを受け取って欲しそうな顔をしていたが、ヨウはふやけている生徒手帳を捲りながら居た場所に戻り、腰を下ろして胡坐を掻く。


校歌や校則のページをすっ飛ばし、まっさらなページに目を向ける。

数ページ捲ったところでケイ直筆であろう、字が顔を出した。
ボールペンで殴った字。

そういえばケイはよく胸ポケットに生徒手帳やボールペンを入れているっけ。

生徒手帳は校則違反防止のためで(ケイは根っからの真面目さんなのだ)、ボールペンは何か書く時用。

意外とめんどくさがりな奴で前になんでボールペンを入れているのか聞くと、
 

“胸ポケットに入れておけばさ。一々ペンケースを取り出さなくていいじゃん?”

“で、そこに入れているわけか?”

“SHRの時に感想文とか書かせるじゃんか? あの時、シャーペン出すの面倒でさ。それに俺、習字を習っていたせいか、ボールペン書きって好きなんだよな。ヨウも真似していいぞ”

“なんでその程度のことをテメェに許可されなきゃいけねぇんだよ。お前は偉人か!”


“田山のちっちゃな特許権なのですよ、これ。なーんちゃってな”


こんな会話を随分昔にやり取りした記憶がある。

ケイはそのボールペンを利用して字を書き殴ったのか。

達筆な字で書かれた文字に目を向ける。


そこにはカタカナ表記で『サトミカズサ』『マミヤ』各々丸印で囲まれており、矢印を引っ張って『フリョウガリ』と記されてあった。


また『ツウシンセイコウコウ』矢印が引っ張られ、『サトミカズサ』とも書かれている。


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