青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「サトミカズサ。こいつがもしかして主犯か? それから、おいキヨタ。お前、25って意味分かるか?」
「え? 25?」
どういう意味だと瞬きするキヨタが四つん這いで移動してくる。
生徒手帳を覗き込んでくるキヨタに、「これ」ケイからのメッセージだ、と指差す。
そこには『キヨタ』矢印が引っ張られ『25』と謎の数字が記されていた。
きっとキヨタ宛のメッセージなのだろうが、「25?」キヨタはなんだろそれ、と困惑気味。
「俺っち宛に25? なんだろう、俺っち、まだ25歳じゃないし。25、にじゅうごぉ?」
どうしよう、ケイさんからの大事なメッセージなのに!
全然思い当たらないと焦るキヨタはちょっと貸して欲しいと、生徒手帳をヨウから引ったくり、中身をぱらぱらと捲る。
「あ、まだ全部読んでねぇんだぞ」
ヨウが言うと、
「俺っちの問題解決が優先ッス!」
と喝破された。
完全に事件のことを無視している。
「うぅうううケイさんの敵討ちするのに必要かもしれない情報なのにッ…、俺っち、舎弟失格!
心を解放すれば、以心伝心できるのかなぁっ!
ケイさんっ、けーいーさぁあんんぅうう!」
「……、キヨタ。あまり吠えるな。住人に…怒られる」
現在の時刻は二時半。
吠えれば怒られる騒音だろう。
シズの注意に口を結び、キヨタは生徒手帳を斜めから見上げて眉を寄せる。必死のようだ。
「あれ?」
と、ここでココロが声を上げる。
他に何か情報はないかと彼氏のブレザーを漁っていたココロが、胸ポケットから何かを取り出したのだ。
それは硬貨のようだが、日本のものではない。
「ケイさん。アメリカにでも行ったことがあるんでしょうか? これ25セント硬貨ですよね」
照明に翳し、硬貨を見つめるココロは25セント硬貨って幾らくらいの値打ちなんだろうと零す。
するとハジメが答えた。「約25円だね」円相場は常に変化しているから、きっかし25円とは言えないが、約25円だとハジメは教える。
なるほど、納得するココロの余所でキヨタがハッと生徒手帳を落とした。
声を掛ける前に彼は自分の脱ぎ捨てた制服に駆け寄り、ブレザーを取ってバタバタとはためかせる。
チリン。
胸ポケットから出てきた硬貨を拾い、表裏を確かめて確信。
「あいつかっ」
硬貨を握り締めてキヨタは殺気立った。