青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「あの25セント硬貨野郎かっ。くそっ、あいつ……っ、ヨウさん。このメッセージはケイさんが俺っちに宛てた主犯の容姿を促すものっス。
俺っちとケイさん、実は随分前に首謀者と思われる奴と顔を合わせているんっスよ。
その時は単に腹立つ奴だって思っていたんですけど。
この25セント硬貨もそいつから押し付けられたものっス」
「ということは、キヨタ。テメェは顔を見ているんだな?」
「はい。多分人物名だろうと思われる二人の名前のうち、どちらかはそいつの名前なんじゃないかと」
これで一つ合致した。
『サトミカズサ』『マミヤ』が主犯である可能性があるということ。
内、どちらかひとりが25セント硬貨野郎だということが。
ヨウはキヨタから生徒手帳を返してもらい、再び中身に目を通す。
『サトミカズサ』の情報は得られやすいかもしれない。
フルネームであろう、その名前と『ツウシンセイコウコウ』という単語が引っ付いているのだから。
『フリョウガリ』を変換すると不良狩りというところだろうか。
ではツウシンセイコウコウは? 後で考えよう。
黒ずんだ染みが所々に映る。
きっと血なのだろう。ケイは暴行を受けた後、朦朧とした意識の中で単語を綴っていたに違いない。
この事件が向こうの完全勝利で収められぬよう、隙を見ては単語を書いていた。
『フリョウガリ』に矢印が引っ張られ『ヨウ』という単語に辿り着く。名前の隣には『ターゲット』と書かれていた。
「(俺狙いってか? この不良狩りは。じゃあ、なんで直接俺を狙ってこないッ)ん? モト、ちょっといいか?」
「あ、はい。オレにもメッセージが?」
隣に並んでくるモトが生徒手帳を覗き込む。
『ヨウ』に向かって矢印が引っ張られ『モト』と記されたその一図。
『モト』の名の隣に『ケイ』と名前が書かれ、二重線でその名が消されている。
一体どういうことか。ヨウにはイマイチ分からない。
モトも瞬きしてその図を見つめていたが、分からなかったようで後で考えてみると肩を竦めた。
でもこれはあまり重要ではないと思う、だってこれは私信だから。
意味深に言うモトの呟きは幸いなことに誰の耳にも入らなかった。
「タコ沢。サトミカズサって不良は聞いたことあっか?」
「荒川…貴様は毎度毎度っ、はぁあ。ったく、まず言うが俺は谷沢だ。サトミカズサって名前は聞いたことがねぇな。不良か? そいつ」
何も分からないから聞いているのだ。聞かれても困る。
「五木は?」分からないか? 間接的な情報役を担っている利二に声を掛けてみる。首を横に振り、「洗ってみます」と平坦に返答した。