青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「あ。メアドはどうする? ヨウちゃーん」


様子を見守っていたワタルが思い出したように視線を流し、率直に意見する。

ケイの携帯を通じて自分達の連絡先が向こうに知れてしまっている。

番号対策は追々考えるとして、メアドは変更するべきなのではないだろうか。

また悪用される可能性がある。

向こうは陰湿な策士だ。
早め早めの対策を求められるだろう。


「テメェ等。全員携帯出せ」


今すぐメアドを変更すっぞ、ヨウは断を下した。

また迷惑メールが送られてくる可能性がある。

そうなれば此方が混乱させられるだけだろう。

災いの芽は早い内に摘んでおきたい。

 
「それはいいけど…、皆に連絡するのが不便になるよね。メアド変更しても、電話番号でメール送れちゃうし」


弥生が肩を落とした。

これから暫くはメールに疑心暗鬼しそうだ。


ケイの一件でメールが怖くなってしまった。


とても不便になると彼女は唇を尖らせ、頬を掻く。

ご尤もな意見にヨウは何か策はないかと、インテリ不良に視線を流す。

一思案するハジメは「向こうは携帯を使いこなしているしね」と小さく吐息。

『Bcc』機能を使った輩なのだ。

随分携帯には詳しそうである。

かといって一々電話で連絡するのも不便だ。


そうだ、ハジメは閃いたと頭上に豆電球を点した。


「情報化社会に則(のっと)って、僕等は僕等の情報システムを使おう。皆、ブログは分かるよね?」


ウェブ上に記録するウェブログ、略してブログ。個人の日記などを公開するウェブサイトだ。

あれを利用しようじゃないかとハジメは告げた。

自分達の連絡簿として使用してしまうのだ。

不良狩りに関する連絡の一切をブログで通してしまえば、メールに悩まされる必要はない。やや手間は掛かるが確実な予防線は張れる。


「あれは閲覧制限ができる筈だよ」


ブログ自体に鍵を掛け、自分達のみ閲覧できるようパスワードを共有。

並んでブログ書き込みのIDとパスワードも共有してしまう。

連絡する際は記事のタイトル部分に名前と簡単な用件を書き込み、本文を書く。これでいこうとハジメは皆に提案した。


「本当に危機が起きた時、重要な問題が生じた時等々は電話使用でルールを固定しよう。少なくとも不良狩りが解決するまでは」

「時間は惜しい。それでいこう。だが、俺はブログってのをやったことねぇぞ」

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