青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
(―――…ケイが繋いでくれたってのに、これっぽちも有力な情報が入らねぇ。くそう、時間だけが過ぎて行くなんて)
机上に身を伏せていたヨウは眠る振りをして鬱々とした感情を胸に抱いている最中(さなか)だった。
仇討ちを決めているというのに、相手の素性は割れない。
情報も入らない。
周囲の声々は無神経なものばかり。
苛立ちを隠せずにいる。
日陰男子だった舎弟が格好をつけたいだけの理由で自分達の傍にいる、そんなわけない。
例え異色でも自分達との友情を大切にし、自分の意思で傍に居てくれる大切な仲間なのだ。
だから自分に狙われていることをメッセージとして残してくれた。
こうして相手の思惑に嵌らないよう手を尽くしてくれた。
暴行されていたにも関わらずだ。
舎兄として応えたい気持ちは山のようにあるのに、何も活かせていない自分に腹立たしい。
かといって情報を仕入れようとしてくれている仲間たちのせいではない。
何もできない自分に不甲斐なさを感じるのだ。
(おばちゃん。ケイの怪我知って、病院に来たんだよな)
喧嘩に巻き込まれたことを知り、肺炎になりかけていた息子と対面した向こうの母親は言い切れぬ悲しみを瞳に宿していた。
けれどもケイの母親は病院に連れて行った自分達に礼を告げ、一言も責めることなく息子を家に連れて帰ったのだ。
片隅で分かってはいる筈だ。
不良達と絡み始めてから、息子が怪我を頻繁に負うようになったことは。
それでも帰り際、ケイの母親は言ってくれた。
「圭太が元気になったら、また泊まりに来てね」と。
(早く仇取ってやりてぇのに…、何してるんだよ俺。舎兄だろうが)
組んだ腕に顔を埋め、ヨウは唇を噛み締める。
無力感という冷水を頭から引っかぶっている気分だ。何か情報が欲しい、なにか。
呼び鈴が聞こえたがヨウは顔を上げない。授業が始まり、教師に起きるよう呼びかけられても無視。
その内、教師も諦めたのか授業を再開。
ヨウは教科書もノートも開かず、ただただ身を伏せてその一刻一刻を肌で感じていた。