青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
転機が訪れたのは夜のことである。
落ち着いて話し合えるという理由でシズの部屋に集まっていたヨウと仲間達は、変化のない日常にギスギスとした空気を作っていた。
否、その空気を作っていたのは窓枠に腰掛けて喫煙しているリーダー本人である。
本人が無自覚ゆえ他の仲間は敢えて空気に気付かない振りをしていたのだが、空気の居心地は最悪なもの。
だれかこの空気をどうにかしてくれ。
ワタルがサイレントで皆に訴えるが、無理だろという視線が返ってくるだけ。幾多に渡って沈黙を作っていた。
その時である。
席を外していたタコ沢がシズの部屋に戻って来た。
「おい荒川」
入ってくるやタコ沢は鼻を鳴らして、不機嫌オーラを纏っているヨウに声を掛けた。
「ンだよ」素っ気無く返すヨウに、
「笑える胸糞悪い話を仕入れてきてやったぜ」
と肩を竦める。
灰をクッキー箱に落としていたヨウの動きが一瞬止まり、まだ火が点いたばかりの煙草をすり潰して腰を上げる。
「聞かせろ。今すぐ」
テーブル側に歩むヨウに憮然と返事したタコ沢は、自分も皆が居るテーブル側に腰を下ろし胡坐を掻く。
途中で買ってきた缶珈琲を開け、それで喉を潤して一息つくと早速語り部に立った。
「隣町で新手の不良チームができた。そのチームは元々三つの札付き小規模人数不良グループが合わさったものなんだが、最近合併して一つのチームになった。
どいつもこいつも万引きやらカツアゲやら親父狩りやら、暇つぶしのように楽しむクダラネェ野郎ども。そしてある意味、知名度に飢えている輩だ」
三グループのトップはそれぞれ臼井(うすい)、風間(かざま)、和白(わじろ)。
こいつ等が同盟を組んで一つのチームに合併させた。
何をキザぶっているのか、『B.B.B』ってチーム名がついている。
正式名は知らんが…、おっと話はこれからだぜ荒川。
それがなんだって顔はよせっつーの。気の短ぇ奴だなゴラァ。
実はこいつ等の内、臼井って男は最近荒川達と遣り合っている。
貫名、お前が襲われたあの一件は臼井が犯人だ。
臼井は喧嘩の場面に出ていないが、仲間にお前を襲わせたと情報を仕入れている。