青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「戻らないといけないのは分かっているんですけど、なんか…、戻れないんです。尻込みする俺がいるんですよ。ヨウに戻るって約束したのに」


戻りたい自分だっているのに、どうしても最初の一歩が踏み出せない。

苦笑する俺をしげしげ観察した蓮さんはたい焼きに齧り付いて咀嚼。

合間合間にその気持ち、すっげぇ分かると言葉を紡いだ。


鳴いている鳩を見つめていた俺は、視線を蓮さんに移す。


尾まで食べきった蓮さんは、「怖いんだよな」と一笑。

苦々しい笑みは俺と同じ表情をしていた。
 

「チームに戻るとさ。嫌だって思い出さなきゃなんねぇじゃん?」


俺で言えば“エリア”戦争。

チームに戻れって言われた時、戻りたい俺もいるんだけど、ストーカーのように自分の裏切りも纏わりついてくるから戻るに戻れなくて葛藤した。

まじで。楠本戦でも同じように葛藤したよ。チームに居続けていいかどうかをさ。


ケイで言えば今回の事件。

リンチされたこと、聞いたよ。

二日間も監禁、そして暴行なんて虐待もいいところだよな。

でも今のケイって至って普通にしている。


まあ、しているように見えてわりと物静か。

あんま事件を思い出さないようにしているように見えるよ。


お前、思い出したくないんだろ? あの事件。

だから荒川さん達のところに戻れないし、会いたくないと思っている。


本当は戻りたいのに、植えつけられた恐怖心が勝るんだ。
 

「ケイが暴行に怯えているのか、はたまたべつのことで怯えているのか。それは俺にも分からない。俺はケイじゃないからな。
でも、ケイは怯えている気がする。事件と向かい合うことに」

 
―――…。


的を射られた気分だ。
 
怖い。ああそうだよ、俺は怖いんだ。あの事件を思い出すことが凄く怖い。

日賀野のフルボッコ事件なんて非じゃないほど怖いんだ。

執拗に繰り返された暴行にも恐怖したし、利用された不甲斐ない俺と向き合うのも怖かった。

チームに迷惑を掛けたことも、弱い自分を再認識することも、今回の事件で心に傷を作ったと受け入れることも怖いんだ。

< 669 / 804 >

この作品をシェア

pagetop