青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


蓮さんの励ましによって一握りの勇気を貰った俺は早足で元祖たむろ場(ゲーセン)に向かう。

遺憾なことに病み上がりなもんだから走ることができない。

いやできるのはできるけど、背中も腹部も膝も痛いんだよ。

二日間も監禁アーンド、あらぁやっだなことされたんだ。しょうがない。

しかもヘビーなジャーマンポテト入りたい焼きを食った後だから胃も重い。


嗚呼、本当は急いでたむろ場に行きたいのに。
 

とはいえ、ゲーセンにはあまり期待を掛けていなかった。

喧嘩や事件が起きた場合、チームはゲーセンよりもスーパー近くの倉庫裏にいることが多いんだ。

ゲーセンはBGMがすこぶる煩いから話し合いには不向きだしな。

三階フロアまで確認した俺はそこから去り、スーパー近くの倉庫裏に赴いた。


馬鹿みたいに緊張しておずおずと訪れたんだけど拍子抜け。誰もいなかったんだ。


あんれー。

出鼻をくじかれた気分だな。此処にもチームの皆がいないなんて。

後思いつくのは浅倉チームのたむろ場だけど、さっき蓮さんに会ったから可能性は皆無。何処に行ったんだ? 喧嘩しているのか?
 

連絡してみようかな。

俺は電源を落としている携帯を取り出した。

あの事件以降から電源を入れていない。

充電はしてあるんだけど、どうしても怖くて。

いや怖じるな圭太。
ファイトだ俺。

電源を入れるだけだぞ。
怖くなんてないさ。何か出るわけじゃあるまいし。


震える親指をボタンに掛けた俺は電話を見つめみつめみつめてフラッシュバック。


携帯を通じて起きた事件に、ゲーム感覚の暴行、そして嘲笑して見下さす里見達。

一晩中受けた冷たい雨と、皮膚を焦がした煙草の熱さ。

背中に負った根性焼きはきっと生涯消えることはないだろう。鏡で見たんだ。


思い出したくなかった記憶を呼び起こした俺は携帯を落としてしまう。

息を吹き返してすぐそれを拾おうと手を伸ばすんだけど、その手がプルプル震えていた。


だい、じょうぶだろ。

もうおわったことなんだ。


今は連絡取らなきゃ。

折角蓮さんが背中を押してくれたんだ。皆に連絡して、何処にいるか聞いて、それで、それで何するんだっけ。

俺は何をしようとしていたんだっけ。


しゃがんだままの体勢で携帯を握り締める。

恐怖心が勝って何をすればいいのか、考えていたことが全部すっ飛んじまった。
 

やや呼吸を乱しつつ俺は携帯を拾い上げて電源ボタンを押した。

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