青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
おいおい、なにこのハブり。
泣くぞ、俺…、泣いちまうぞ!
なんでメールが送れないんだよ…っ、皆、まだ偽田山圭太メールを疑っているのか?
それとも何か対策を打って…っ、電話番号でメールを送ったらいいのか。
いやでも、もし…、ああどうしよう。ヨウ達を避けたから罰が当たったのか?
だったら別の罰にすりゃいいじゃんかよ!
これは酷いって!
大パニックになっている最中(さなか)、向こうから会話が聞こえた。
声を聞くだけで石化してしまう俺は、生唾を飲んで輩の会話に耳を澄ます。
「甘く見ていたなぁ。舎弟を潰せば、大きく秩序が乱れてスムーズにチームが解体できると思ったんだけど。ミヤ、どう思う?」
ドッドッド。
心臓が高鳴って輩の会話が頭に入ってこない。
動揺に動揺が重なって…、ちゃ、ちゃんと聞いてかないと、必要な情報が入手できるかもしれない。
「荒川の乱心を狙った作戦は半分成功、半分失敗ってところだろう。だが、戦力は欠けている。奴等の奇特戦術は低下しているからな。狙いどころではあるだろ」
ドッドッド。
奇特がなんだって? 戦術? あぁあ、お、落ち着け俺。思い出すな、あの時間を思い出すな。
「どうでしょう? ミヤ。俺は寧ろ、狙いにくいと判断しますが。何せ田山の一件で、チームは多大な警戒心を抱き始めています。
そろそろ此方の存在にも気付いているでしょう。
乱心した荒川が見境なく、無鉄砲に『B.B.B』に突撃して相打ち。というのは、甘い作戦だったかもしれませんね」
ドッドッド。
「予想外だったんだってマッキー。まさか荒川が二日で田山の事態を察するなんて。一週間猶予があれば、それこそ乱心どころか、発狂さえ狙えたのに」
ドッドッド。
「まあでも、あそこまでヤラれたんだ。戻ってきたらまた、あんな目に遭わせると脅しておけば、きっと動きが鈍る。ふふふっ、恐怖心は有効利用しないとね」
ドッドッド、ドッドッド、ドッドッド。
向こうの会話が全然耳に入ってこない。でも一フレーズだけ聞き取れた。戻ってきたら、また同じことを繰り返すという、非道なフレーズが。
俺は全身を震わせて携帯を握りつぶす。
恐怖に負けたくない思いと恐怖に折れそうな気持ちが交差している。
俺が荒川の舎弟である限り、いつかまた利用されるんじゃないかという不甲斐なさ。暴行された恐怖と、蔑む嘲笑。どれも真新しい傷を抉った。