青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―

 



「―――…圭太ってさ、ホットミルクに甘味は求める派?
おれ、最近蜂蜜を入れる美味さに目覚めて飲む時はいっつも入れてるんだ。無い時は砂糖で代用しているけど、やっぱ一番は蜂蜜なんだ。てことで入れてやるよ。サービスだ」
 
 
小さなちゃぶ台におぼんを置いた健太は饒舌に喋りながら、熱々のホットミルクに蜂蜜を入れて匙でかき混ぜる。

一連の動作を眺めていると健太がマグカップを置いてきた。

渦巻いているホットミルクを茫然と見つめている俺に、「ほら飲んだ飲んだ」と急かしてくる。

蚊の鳴くような声で礼を紡いだ俺は取っ手を持ち、湯気立っている牛乳に息を吹きかけた。

熱いからちょっとずつ飲んでみる。

めっちゃ甘いホットミルクだけど、わりといける気がする。


ズズッとホットミルクを飲む俺は、ホッと息をつく。

安心が胸に広がった気分。

同時にぼろっと涙が零れて自分自身に大ショック、もう駄目だと落ち込んだ。


「なあにしてるんだろ…俺」

「おれの部屋でホットミルクを飲み、ようやく安心した圭太さんがいる」

「いや…、そうじゃなくて。女々しい俺に嫌悪してるんだよ。いっそ…、女になりたい」


「おっと? まるで仕事に失敗したリーマンが自棄酒をしたことによって、突拍子もなく言い出すイミフ台詞だな、それ。
なに、このホットミルクにアルコールでも入っていたか? おっかしいな。普通の牛乳な筈なんだけど。ついでに蜂蜜にも問題はないと思うんだけど」


マジマジと蜂蜜の入った容器を見つめる健太のノリとは対照的に、ずーんと俺は落ち込んでいた。


ほんっと何しているんだろう、俺。 

ヨウ達を避けて、本調子じゃない自分に落ち込んで街中をうろうろ。

蓮さんのおかげでやっとチームに戻ろうと決心したはいいものの、心当たりのあるたむろ場には仲間がいない。

偶然にも里見上総に出くわしてパニック。

トドメに仲間ともメールが取れず大パニック。


健太のおかげで、ちとは落ち着きは取り戻したけど、こうして振り出しに戻っている俺がいる。
 

折角蓮さんと話してさ。
たい焼きも奢ってもらってさ。

うっしゃ頑張るぞ、おー! って気持ちになっていた矢先に心が折れるとか乙すぎるぞ。

しかもド派手に泣いたとか情けないこと極まりない。

気持ちは少し落ち着いたのにまだ涙は止まらないし。

どんだけ涙腺崩壊だよ。

映画やドラマに関しちゃ涙もろい俺だけど、リアルでの出来事でこんな酷い泣き方するなんてそうはない。

健太と絶交宣言した以来かも。


とにかく涙が止まらん。

くそっ、涙腺という名の水道が壊れた。
水道屋に頼んで直してもらいたいもんだ。



なんか頭は痛いし、泣きすぎ。

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