青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
ティッシュを貰った俺はそれで鼻をかみ、屑篭に放る。
「ごめん」
喋れるくらいに落ち着いた頃、俺はいきなりメールで呼び出したこと、そして部屋に邪魔させてもらっている二つの行為について詫びた。
何もかもが唐突だったってのに、健太は愚図っている俺の腕を引いて自分の家まで連れてきてくれたんだ。
俺の気持ちを察し、外じゃ安心できないと健太は判断してくれたんだろう。
幸いなことにおばちゃんはいなかったから、この酷いツラは見られずに済んだけど。
奈落の底に落ちたような面持ちを作る俺に苦笑する健太は小さく肩を竦めた。
「おれがしたいからしてるだけだって。気にすんなよ」
俺の詫びを流す健太は家の方が落ち着いて話せるし、と一笑してくる。
気遣ってもらったことに激しい自己嫌悪を覚える。
こんなにもパニクるなんてすげぇショック。
自分がこんなに弱い人間だと思わなかった。強いとは到底言えないけど、こんなことでウジウジと泣く人間とは思わなかったんだ。
何があっても、それこそ挫折しても今まではすぐ立ち上がれたんだ。
なのに今回は立ち上がった直後にまたすってんころりんとか。
グズっ…、もう女になろうかな。マジで。
女々しい俺なんて俺なんてっ、オネェの道でも生きていけっかな。俺。
嗚呼、でも彼女のココロにはなんて言えば!
こ、これから女友達として仲良くしていきましょう?
女の嗜みを教えてね、とか言うべき?
いやいっそ女同士という茨道でも俺を好きでいてくれますか? とか、お願いするのも手かも。
いたく真面目に呟く俺の独り言に、「阿呆か!」どんだけ自己嫌悪してるんだと健太にツッコまれた。
だってしょーがないじゃないか。本当にショックだったんだから。
日賀野の時だってパニックになったっちゃパニックにはなったけどこんなに酷くなかったし(今もトラウマは抱いているけど今回のケースとは全然違う)、五十嵐戦時だって集団リンチされたし入院って経験もしたけどちゃんと乗り越えた。
前提に皆揃ってリンチされたって条件があっても、ちゃんと乗り越えられたんだ。
……初めてなんだよ。
ここまで現実の恐怖にポッキリ屈しているのって。
励ましを貰ったら、大抵すぐ立ち上がれる雑草魂があるんだけどな。
苦虫を噛み潰した表情を作る俺に、「ニンゲンだもの」七転八倒もあるって、健太はマグカップの中身を回しながら意見する。