青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


まったくもってそのとおりだ。

俺はつられて苦笑すると、「少しだけ」舎兄弟とか、チームとか、そういった肩書きが重くなったと本音を漏らす。
 

「柄に合ってないんだろうな。元々地味だったわけだし」

「ほんとになぁ。中学に戻りたいや。喧嘩なんて恐ろしい世界、あの頃はなかったもんな。山田山していた頃が懐かしい」


「田山田だって」返す俺はやっと自然に頬が崩せた。

目尻を下げる健太はなんなら、戻ることもできるんだぞと意味深な台詞を吐いた。

どういう意味かと首を傾げてホットミルクを啜る俺に、「ヤマトさんに」お前を入れてくれるよう頼むよ、と爆弾発言。

危うく気道に入りそうになったホットミルクをどうにか飲み込んで、俺はそれは嫌だと連呼した。

が、健太は不気味にニッコリ。
 

「なんでだよ。今回の事件で里見の方がトラウマになっただろ? んじゃあ、ヤマトさんはもう大丈夫じゃんか。
ヤマトさんさ、お前のことめっちゃ気に入ってるんだぜ?
おれが荒川チームに手を貸したいって言ったときも、『プレインボーイに借りあるしな』ですぐ承諾してくれたし」


「手を貸した件はよく分からないけど。か、借りって…、ちゃんと返そうとする日賀野なんて、お、恐ろしい。

てか、俺の立場はどーなるよ!
俺が抜けるってなったら、ヨウ…、めっちゃ怒るぞ! あいつとはクラスメートなんだぞ! 居心地悪くなるだろ!」


「まあ、それはそれ。でもお前がこっち来たら山田山は復活ってことだ。レッツトライ!」

「むっちゃ言うぜ山田さん! 地獄へ行けって言ってるのと一緒だぞ!」
 
「やれやれ最近の若人はチャレンジ精神に欠けている。忍耐もないし。だから駄目だって団塊世代に言われるんだろうな」

「ンマー、随分老人じみた台詞を吐きますね」


わざとらしい溜息をつく健太に俺は引き攣り笑い。俺の立場を考えろって。

同校生でクラスメートの俺とヨウなんだぞ? 席は前後なんだぞ?


関係的にも距離的にも身近だってのに、そんなことをしてしまったら最後、どんな悲惨な光景が繰り広げられるか。


身震いする俺に大笑いする健太。他人事だと思って、不機嫌に鼻を鳴らした刹那、俺は気付く。


―――…俺、ちゃんとノれてるじゃん。




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