青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
#10. 「だって舎兄じゃねえか」
随分健太の家に長居してしまい、気付けば五時を過ぎる。
普段だったらなんてことない時間だけど、今日はもうお暇しないと。
これでも病み上がりの身の上だ。
やっと治ったってのに、どこをほっつき回っていたんだって母さんに叱られちまう。
健太にひとりで帰れるかって心配されたけど、日もまだあるし、俺は健太みたいにストーキングされていたわけじゃないからな。
里見等も今しばらくは襲ってこないだろう。
日があるうちに襲われたのは否めないけど、人目の多い大通りを通れば大丈夫だと思うし。
俺はひとりで帰れると返して健太に礼を告げた。
おかげさまで随分気が楽になったし、元気をもらえたし、なんとなく調子も出てきた。
チームのことは今晩にでもゆっくり考えることにしよう。
電話という手を使って連絡を入れてみるのもいいかもしれない。
とにかくまずは焦って物事を見ないことだ。
チームに心配をかけているのは確かだし、戻った方が良いって気持ちもある。
でも俺がいないから潰される弱いチームでもない。
だって手腕のある奴等は皆、健在なんだぜ? 潰されるわけないじゃんか。
ちょっち自分の恐怖心と向かい合ってみようと思う。
健太に伝えると、「お前のペースが一番だよ」と微笑まれた。
俺は笑みを返して健太と別れる。
本当に健太には世話になったよな。
あいつが俺を支えてくれなかったら、飛んで来てくれなかったら、俺はきっとたむろ場の隅っこで延々恐怖心に支配されていただろう。
それこそポッキリと気持ちが折れて自暴自棄。
何もかもを投げ出して引きこもりになっていたかもしれない。
夕焼けに染まる大通りを歩き、俺はいつまでも健太に感謝していた。
そして俺の背中を押してくれた蓮さんにも。
健太の助言と蓮さんの一押しを胸に刻んで、俺は俺のペースで少しずつ自分を取り戻そうと思う。