青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
◇
【五丁目某番地
コンビニ跡地付近路地裏】
到着時間を二十分と目測していたけれど、予定時刻よりも十分ロスして俺は仲間とそこに到着する。
その路地裏はやけに静まり返り、大通りを走っている筈の自動車の音がまるで聞こえない。
まるでこの路地裏だけ隔離されているようだ。
錆びたフェンスの扉を通り過ぎて行き止まりに辿り着いたヨウは、「あそこに」ケイがいたと壁側を指差す。
あの壁の側で横たわっていた。
ヨウの硬い声音が説明をしてくれる。
で、皆が俺に注目するわけだけど、本人は腕を組んで首を捻るばかりだ。
見覚えないなぁ、此処一帯。
「こんなところに連れ込まれた記憶、これっぽっちもないや。本当に俺、此処にいたのか?」
「ああ。それは間違いねぇ。ほらあそこ。雨樋パイプに手錠がついてるだろ? ケイと繋がっていた手錠の残骸だ」
俺は雨樋パイプに目を向ける。
あ、本当に手錠が掛けられている。
ということはあそこで俺は繋がっていたというわけか。
けどなぁ、ゼンッゼンこの辺りは見覚えがないんだよな。
路地裏になんて、わぁお二日間素敵監禁生活には一度も足を踏み入れていないし。
何より倉庫がない。
俺は倉庫にいたんだけどな。
わりと広い倉庫だったんだけど。
「此処と大通りは一本道。ということは、必ず大通りを通らないといけなかったと思うんだけど…、負傷している俺を此処まで運ぶって結構手間だと思うんだよな。車で運んだわけでもあるまいし。それに人目もあっただろうに」
「人目はどうとでも誤魔化せるっしょ。
例えば、僕ちゃんがそこのモトちゃんをおぶっていたとする。モトちゃんは負傷していて、僕ちゃんはそれをおぶって大通りを歩く。しかもわりかし速足で。そしたら通行人のキヨタちゃんなら、どう思う?」
「えーっと、怪我してるしおんぶしてるから…、病院に急いでいるんじゃないかと」
「だしょ? あの日は雨が降っていたわけだし夕暮れ過ぎだった。視界も悪いし、怪我人と一緒に傘を差していれば、傘でおんぶしている人は見えにくい。
それに通行人もよっぽどの暇人じゃない限り、その怪我人達を目で追うなんてことしないっしょ」