青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―

「なるほどな」人目はどうとでも回避できるってことか、ヨウの結論にポンピンとワタルさんは笑った。

ただし、ワタルさんは言葉を続けてくる。

あの日、俺が此処まで移動されたのはきっとゲーム終了後。

だって俺が仲間と電話している時は、確かにまだ倉庫にいたんだ。

俺の意識もまだあったわけだし、そこにいると仲間にヒントも出した。


ということは俺が運び出されたのはゲーム終了後のこと。


万が一、俺を運び出している最中に荒川チームと鉢合わせになったら洒落にならないため、近場に放置したんじゃないかとワタルさんは仮説を立てた。
 

「バイクで負傷した人間、しかも気を失った奴を運ぶって至難の業だし。徒歩で此処まで移動したと思うのが筋じゃないかぴょーん?
つまりケイちゃんの監禁されいた倉庫は近場にあるなり!」
 
尤も、これはハジメの意見らしく、ワタルさん自身の仮説ではないとか。

だよなぁ、いきなり名探偵ワタルになったからびっくらしたよ俺。
 

「うひょーん! 必ず倉庫を見つけ出してやろうじゃなーい! ジッチャンの名にかけて僕ちん頑張る! ついでに真実はいつもひとーつ!」


……、嗚呼、そして完全に名探偵になりきっているワタルさんがいる。

貴方様のおじい様は探偵でもしていたんですか?

それとも見た目は子供、頭脳は大人で裏社会組織を暴こうとしている高校生探偵とでも?


あきれ返っているヨウが相手に肘打ちを入れ、真面目にやれと毒づいた。

左脇腹を押えるワタルさんは大真面目なのに、と唇を尖らせている。
誰がどう見てもふざけているようにしか見えないと思うのは俺の気のせいだろうか?


「でも目的は倉庫じゃないですよ?」


モトがワタルさんに意見した。


そうだ、倉庫を探すが目的じゃないんだよ。


倉庫に行って俺が思い出したい記憶を思い出すのが目的なんだよ。
本当に思い出せるのかなぇ、この調子で。

やれやれと頭部を掻いて俺は自分が倒れていたという壁に視線を向ける。

コンクリートの壁はクリーム色で塗装されているんだけど、見事にスプレーで落書きされていた。

着飾ったアルファベットで綴られている文章は“see you soon !!”か。

ちょいと目線を上げるとその文の上に“Hope to”という文が…、あーっと直訳するとなんだ。


『近い内にあなたに会える事を願っています』だな。


けど、挨拶的ノリだったら『また近い内に会いましょう』だよな。

英語は得意じゃないからなんとも言えないけど。


誰が書いたか分からない英文を見つめていた俺だけど、次第次第に青褪めて身震い。

こ、この見覚えある英文は。

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