青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「ケイさん、大丈夫っスか? なんだか顔色が良くないみたいっスけど」
「え、ああ…、だ、大丈夫だよキヨタ。ちょ、ちょーっとヤーなことを思い出しただけだし」
おぉおお思い出しちまったっ。
この英文っ、里見上総と俺が会話した英文だっ。
あれは監禁二日目の朝のこと。
フルボッコにされた俺が休憩していると、あいつが倉庫に入って来て、頼みもせずに英文をつらつら喋りに喋って。
こっちは体が痛いだの熱があるだので死にそうになっているのに、悠々と英語で何かを喋る里見がいて。
「はい?」みたいな顔をしたら、「君って馬鹿だろ?」とか言われたんだよな!
あいつうっぜぇえ!
俺はベリーベリージャパニーズだよ!
イングリッシュなんて分かる筈ねえじゃんか!
普段から英語なんぞ分からんのに、フルボッコ後のリスニングはなおきついっつーの!
「フルボッコ後に英語の授業とかイミフなんだけどっ。あいつ絶対中二病だよなっ、こんな英文をカッコよーく壁に残しやがってっ!
へんっ、気取ってんじゃねえぞ畜生!
俺は英語が駄目なんだっ!
生粋の、生粋の日本人じゃボケェエ!
大体お前だって日本人の名前じゃないかっ、気取るなら日本語で気取ってみろド阿呆!」
「お、落ち着けケイ! どうした? 英文がなんだ? アンタ一人でパニクってちゃ分からねぇから!」
モトに宥められて、はぁあっと俺は深呼吸。
上下に肩を動かして脂汗を手の甲で拭った俺は、「あれ」多分、里見が残したメッセージだと落書きを親指でさす。
ヨウはやっぱりそうかと吐息をついた。
俺を見つけた際、真新しい落書きに気付き、そうだと思ったらしい。
「しっかし。そーんってどういうことだろうな」
ヨウはさっぱり分からんと頭を掻いた。
「だねぇ」ワタルさんも腕を組んでうんうんと頷く。
え、そーん?
それってどういう意味…、目を点にする俺を余所にキヨタはきっと倉庫を指し示すメッセージなのだと力説した。
「ホープ・トゥ・シー・ユー・ソーン。里見はメッセージを残すことで、きっと俺っち達を挑発してるんッスよ! いけ好かない野郎ッスね!」
「んー、英文にするなんざ癪に障る知能犯だな。けど俺達には英語ができるハジメがいっぞ。うっし、これ写メるか!」
「本物の名探偵の出番だっぴょーん!」