青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―

 
「あ。奥に扉がありますよ、ヨウさん」
 

前方を指差すモトの発見によって俺達はその扉をゆっくりと開く。

待ち受けていたのは廊下だった。

意外と広い倉庫みたいだ。
きっとこの奥には管理室や事務室みたいな場所があるんだろう。


……今更だけど、これって不法侵入だよな。

テナント募集って表看板に表記されていたくらいだし。


持ち主に訴えられないことを願いながら、部屋を一つ一つ開けてみる。どの部屋も空っぽで埃っぽい。


そうして扉を開けていくと、ひとつの小部屋に辿り着いた。

他の小部屋と大して変わらないんだけど、ヨウが鉄扉を開けると向こうにダンボールが収納されていた。


最後尾を歩いていた俺は自然と足を止めてしまう。


先に中に入るヨウ達は積まれたダンボールや袋いっぱいに入っている工具、壁際で寝転んでいる鉄棒を観察している。


「ん?」モトが格子窓近くにしゃがみ、何かを拾っていた。


それは煙草の吸殻。

不可解なことに吸殻はどれもさほど短くなっていない。


火を点けてすぐにもみ消したような痕跡がある。

「変だな」普通はもっと短くなってもいい筈なのに、山のように同じ吸殻が落ちている。


モトの疑問に俺は吐き気がした。
なんでかってモトの疑問に答えられる俺がいるからだ。

だってそれは監禁されている際、行われたペナルティゲームの残骸。

脳裏に蘇ってくる嘲笑に罵声、背中を踏まれる痛みに揺らぐライターの小さな炎。

皮膚の焦げる感触。
どれもこれも鮮明に思い出してしまう。


それなりに日が経っているというのに、こんなにも鮮明に思い出せるなんて。


思った以上に俺は恐怖心をあいつ等に植え付けられているのかもしれない。

ああくそっ、奴等の思惑に嵌っているようでムカつく。
 

……や、やばい。

これはリバースがくるかもしれない。

ま、まだ大丈夫な気もするけど胃が悲鳴を上げてっ……、おおうっ、ストレスなんだぜ畜生。

アイタタっ、胃、胃がイテェ!
胃痛持ちになりそうなほどっ、胃が!

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