青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
錆びかけの格子の向こうからは青々とした空がぽっかりと顔を出している。
目に飛び込んでくる光景は、至って普通。
貸倉庫の駐車場やら、道路やら、空を飛ぶ雀やら。大した光景は何もない。
あっれ…、じゃあ俺は何を見たんだっけ。何を。思い出せないや。
なんか特徴のあるもの…、というかこの景色を眺めていたら、「あ」って思うような重大なことがあったんだけど。
「どぅーう?」ワタルさんの問い掛けに、「うーん」俺は首を捻って眉をハの字に下げる。
何も思い出せないし、ピーンっとくるのもないや。折角此処まできたのに。
「無駄足を踏んだかもしれません。全然思い出せないや。はぁ…、此処まで来れば何か思い出せると思ったのになぁ」
思い出せるのは監禁時の暴行ばかり。
俺は格子窓から視線を流し、とある鉄柱に目を向けた。
そこに歩んでちょっと屈んでみる。鉄柱の下部が擦れている。
これは俺が何度も手錠を壊そうとした後だ。
鉄柱の肌に無数の線が付いていた。
ふうっと息をつき、俺はしゃがんで膝に右肘を置き頬杖をつく。
「思い出せないなぁ」
落胆しているとヨウが肩に手を置いてきた。
「ケイ、そう落ち込むなって。倉庫が見つかっただけでも儲けじゃねえか。今日は一先ず、引き上げようぜ。長居しても一緒だろ? 此処はてめぇにとって気分が悪いだろうし」
心配してくれるヨウに苦笑し、「そうだな」俺は素直にその気持ちを受け入れた。
こうしていても始まらない。
今日のところは一旦撤退して、後日もう少し気持ちを落ち着かせてから此処に来よう。
余裕ができれば思い出せるかもしれないしな。
でも何か手掛かりくらいは欲しいところだよなぁ。
授業までサボって赴いたんだ。砂粒の情報でも手に入れられた…、あ。
「モト。ごめんけど、そこの扉、開けてくれないか? なんか閉まっていると気分が落ち着かなくって」
俺は扉付近にいるモトに頼み込む。
「いいよ。ちょっと待ってろ」
鉄扉に向かうモトに悪いな、と俺は片手を出した。
扉が閉まっているとあの当時のことを思い出しちまうんだ。開放されていたら幾分気持ちも楽になる。
モトがドアノブに手を掛けた。
そのまま押し開こうとしたんだけど、何かにぶつかってそれは開かず。
「あれ?」
なんで扉が開かないんだ?
眉根を寄せるモトが何度も扉を開けようとするんだけどちっとも開かない。
キヨタが駆け寄って一緒に開けようとするんだけどまったく微動だにせず。
ワタルさんも参戦して扉を開けようとするんだけど、それは開くことがなかった。
え、ちょ…これってまさか。