青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「そろそろ帰って来るかな」
意味深な独り言を漏らすキヨタがアクエリの入ったペットボトルを傾けた。
くびりと喉を鳴らして半分ほど飲み干したそれに蓋をすると、
「ちょっと待ってて下さいね!」
木材から飛び下りてBダッシュ。
表に向かって走っちまった。瞬きを繰り返してキヨタの走った方角を見つめていると、
「ケーイさん! 帰って来ましたよ!」
と、これまたBダッシュで俺の下に戻って来る。
何が戻って来ているのか説明は一切なし。
俺の腕を引いてちょっとこっちに来て下さいと強引に連行してくる。
「お。おい」
一体何なんだよ、困惑している俺にいいからいいからとキヨタは微笑して表まで足を伸ばした。
つられて表に足を伸ばした俺は、待ち受けていた光景に目を見開いて足を止めてしまう。
表には俺のチャリの姿。
すっかり忘れていた、その存在。
帰りがけに仲間の誰かが持って帰って来てくれたみたいだ。
チャリのタイヤを触っていたモトとヨウが、「ちゃんと修理されていますね」「バッチシだな」と会話している。
で、俺の存在に気付いた二人が口を揃えて、チャリを忘れちゃ駄目だろってツッコんできた。
「アンタの武器だろ?」
これが無いと無能になるんだから、皮肉ってくるモトだけど言葉に棘はない。
「久しく乗ってねぇな」
俺の特等席が恋しいぜ、ヨウはおどけてサドルを軽く叩いた。
察する。
モトとヨウが自転車屋に行って修理して来てくれたんだと。
いつの間に自転車屋に行ってくれたんだろう?
呆ける俺に「俺っちとヨウさんからの」プレゼントっス、とキヨタ。
貴方の舎弟から、そして舎兄からのプレゼントだと笑顔を零してくる。
ちなみにこれは自分が発案したのだと舎弟は得意げな顔をした。
するとヨウが何を偉そうに、と不満そうに反論。
「俺がモトとチャリを修理を出しに行ったんだっつーの。自分は楽しやがって」
「違うッスよ! 俺っちはケイさんのために飲み物を調達していたんっス! ケイさんの体調第一なんっス!
それにこういうところで株を上げておかないとヨウさんには勝てませっ…、しまった。本音が」
「テメッ、楽よりひでぇじゃねえか!
その昔は俺に惚れただの言っていたくせに、いつからこんな生意気な奴になったんだか。あと修理費は折半だからな」
「俺っちはケイさん至上主義っス!
今もヨウさんは尊敬していますけど、ケイさんには劣るっス! 修理費は……、ごちそうさまっス!」
「お前は払わないつもりかよ!」