青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
ふと倉庫内からキヨタの悲鳴と悪口(あっこう)、それからヨウの怒声が聞こえた。
キヨタの奴、まーだヨウをジジイと言っているらしく、走り逃げ回りながらヨウにジジイだの足腰が弱るだのチャリの後ろを譲れだの毒づいている。
あんまりにも悪態をつくもんだから、「キヨタァア!」ヨウさんの悪口を言い過ぎだ! とヨウ信者が乱入しに倉庫内へ。
おかげで三人の喚き声が倉庫いっぱいに響き渡った。満たす馬鹿騒ぎの声が煩いのなんのって鼓膜が忙しなくいつになく働いているっつーの。
微苦笑を顔に浮かべ倉庫の入り口に佇んで三人の喧騒を眺める。
いつも見ていた馬鹿騒ぎの光景。でも久しく見ていなかった光景に安堵の息が漏れる。
ふと右肩に重みを感じた。
視線を持ち上げると、
「これがいつもの光景だよねん」
聞きなれたウザ口調の持ち主がウィンクしてくる。
相槌を打ち、俺はようやく戻って来た実感が湧いてきたと相手に吐露。
そしたら相手が俺の口癖を真似て言ってきてくれた。
「やっとケイちゃーんが戻って来た実感が湧いてきたよんさま」
と。
嬉しい言葉を掛けてくれるワタルさんに一笑すると、
「ケイちゃんいないと困るんだよねぇ」
ワタルさんが突拍子も無いことをのたまった。
目を丸くして話の続きに耳を傾ける。
ワタルさんは優しく背中を叩いて、
「だってヨウちゃんのストッパーはケイちゃーんが適任だから」
言うや否や、オレンジの長髪を靡かせて喧騒の輪に飛び込むため地を蹴ってしまう。
呆けているとシズが後ろからスッと俺の脇をすり抜け、「照れ…てるんだな」柄にも無いことを言ったもんだ、ワタルさんの様子について欠伸を噛み締めながら教えてくれた。
副リーダーの後ろを歩くタコ沢は此処はいつも喧しいと鼻を鳴らし、さらに続いて弥生と響子さんが俺に大丈夫かと声を掛け、倉庫に入ってしまう。
瞬きして仲間達の様子を見守っているとハジメが隣に並んできた。
「つくづくケイとは同じ運命を辿るよね。
フルボッコといい、監禁といい、僕達は災難という運命の糸で結ばれているのかも。一時離脱するところまで同じなんだから、お笑い種だよね」
「ハジメ…」
「ケイ。僕は君の気持ちが痛いほど分かる。
味わった恐怖心は簡単に拭えない。僕は入院して、いや退院して祖父母の家で自宅療養していた暫くの時間、味わった暴行に苛んで過ごしていた」