青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
完全にへそ曲げ圭太になっていたけど、開き直ったように利二がそろそろ行こうと声掛けしてきた。
あまり廊下に長居していると授業に遅れる。
真面目発言に俺は同調し、ヨウを呼んで歩みを再開した。
なんてことのないやり取りだったけれど、俺は立ち去る際、舎兄の表情を盗み見。
スーッと目を細めてしまう。
ヨウの奴、完全に探りの姿勢に入っているな。
矢島とクダラナイ喧嘩をしていても、片隅で観察しているっぽい。垣間見える表情が険しい。
「おいパシ」
矢島に呼ばれ、俺は足を止めて体ごと振り返る。
向こうに視線を留めると、「貴様」放課後に来いよ、と突然の呼び出し。いつものことだけど今の俺はちょっと戸惑ったり。
「何故ですか?」問い掛けに、「はあ?」パシリのパシだろう? と呆れられる。
これまたいつもの台詞だけど……、うーん、もしも俺が本当に矢島のところに行ったら何を「ケイ。行くぞ」
声音を張った舎兄の声に呼ばれた俺は、「すんません」行かないといけないんで、片手を出し先で待っているヨウと利二の下まで駆け足。
背後から含みある視線を感じ、一度だけ振り向いて確認する。
けれどそこには既に俺達の存在を忘れて舎弟二人と戯れている矢島の姿があるだけ。
それは素から彼等に接しているように見える。
―――…矢島は本当に舎弟二人と利用しているのかな。
見えない矢島の本心に複雑な念を抱きながら二人と階段を上がる。
そしたら踊り場で二人に何を考えているんだと叱られた。
いきなり叱られた理由が分からなくて俺は、「え、え?」と狼狽。
すっとぼけるなってヨウに怒鳴られたけど、本当に理由が見えない。
キョドる俺に溜息まじりの助け舟を出してくれたのは愛すべきジミニャーノの利二。
「田山、お前。ひとりで矢島のところに行ってみようかと、馬鹿なことを考えただろ?」
指摘されて俺は理解した。
二人は矢島の下に行こうかと考えた俺を叱り飛ばしているんだ。「そんなことないじゃん」おどけると、ギッとヨウに睨まれた。
なので正直に、
「ちょ。ちょっとだけ思っちゃったです。はい」
指遊びをして言葉を濁す。
刹那、イッタイ拳骨を食らった。
頭を抱える俺に当然の報いだとヨウは鼻を鳴らし、許可しないからなと凄みを利かせてきた。
アイテテ。
本気でそう思ったわけじゃないのに。
ほんの少しだけ、そうしたらどうなるんだろう? って考えただけなのに! 本当にはしないよ! …た、多分。