青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「ケイ、テメェは自分の怪我をなんだと思ってやがる!
しかも相手はあの矢島で里見と繋がっている“不良狩り”の連中だ。情報収集のためにしようと思った行動だとしても、ぜってぇ駄目だ。許可しねぇ。
チームのためにも考えを改めろ。
テメェは心身完治してねぇ。多少の無理は目を瞑るとしても、矢島の件は勘弁してやらねぇからな」
「荒川さんの言うとおりだ。田山、お前は荒川さんと繋がったばっかりに、無茶する性格が目立っている。繰り返すが荒川さんと繋がったばっかりに、無茶する性格が目立っているぞ」
「五木…」それって遠まわし、俺のせいか? 険しい顔を作っていたヨウが一変して脱力する。
「本当のことです」悪びれた様子もなくケロッと利二は言い放つ。
お前もいつの間にか、ヨウ相手に意見する肝の据わったジミニャーノになったよな。感服するぞ。
きつめに注意を受けた俺は反省の色を二人に見せながらも、片隅で別のことを思っていた。
ヨウも利二も俺の性格を熟知しているから、まだ阿呆なことを考えているんじゃないかって忠言してきた。
生返事をする俺はべつに単独で矢島のところに行くとは考えないと、その胸の内を明かす。
ただ矢島のことを考えていたのは確かだ。
記憶をめぐらせ、「矢島さ」実は俺に優しくしてくれたんだよ、と二人に吐露する。
予想外な発言だったらしく、ヨウも利二も目を点にする。
頭部を掻いてその思い出があるから矢島に畏怖しないのかもしれない、静かに肩を竦める。
さっきの俺、矢島にこれっぽっちも恐怖心を抱かなかった。
ヨウなら分かってくれると思うけど、俺は里見繋がりの人間に恐れを抱いちまうんだよ。
間宮を見ただけで動揺したんだから、あの監禁事件は人生最大の悲劇。絶大なトラウマになっている。
例えば里見繋がりの不良、俺を暴行した『B.B.B』って奴等にばったり遭遇したら俺は泣くね。泣く自信があるね!
でも矢島は恐くなかったんだよな。
同情された記憶と軽食を貰った記憶が微かに残っているからかもしれない。
「おかげで変な態度は取らずに済んだんだ。
もし取っていたら、向こうが勘付いていたかも。矢島はどうして俺に優しくしてくれたんだろ?」
「それが厚意に入るとは俺には思えねぇ。
暴力を受けていたケイにとっちゃ小さな厚意かもしれねぇけど、俺には同罪だ。同情であれ善意であれなんであれ、あいつは里見と関わっているんだから」
不機嫌に鼻を鳴らすヨウは、この話は教室でしようと先に足を伸ばす。