青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「あ。おい」舎兄を呼ぶと同時に、「田山」利二に制される。
視線を流せば、「自分も荒川と同じ気持ちだ」と苦笑されてしまった。
「お前が自分達の立場なら同じことを考えてしまうだろ?」
意味深に告げられ、俺は間を置いてそうだなと眉を下げて苦笑。
仮に俺とヨウの立場が逆転してしまったら、俺は相手を許せずにいるだろう。
だって友達をこっ酷く傷付けられたんだから。
ハジメの時だって俺は。
「ケイ。五木。行くぜ」
階段を上り終えたヨウに呼ばれ、俺達は早足であいつの下に向かう。
道草を食ってしまったせいか、目的の教室に向かう途中でチャイムが鳴り始め、俺達は矢島のことを話す余裕もなく駆けたのだった。
欠課を増やすのは追々泣きを見るため(進級できなかったら…なあ?)、午前中の授業をしっかり受けた俺達は昼休みになるといつもの体育館裏。
ではなく、空き教室で昼食タイム。
勿論気分を変えるために場所を移動したわけではなく、より安全な場所で“不良狩り”の話をするため。
表向きじゃ気分を変えようぜムードで移動してきたけど、果たして矢島にそれが通じたかどうかは分からない。
タコ沢や利二を交えたチーム全員で昼食を取りながら“不良狩り”の話をする。
「はーい。ポテチは開けておいたから、皆で食べてね。昼休み中に食べてくれないと処分に困るから宜しく」
明るいムードにしようと弥生がポテチを開封して俺達に笑顔を向ける。
「キットカットやプリッツもあるから」
と、すっかり空気は菓子パーティーだ。
リーダーは呆れて注意を促す、と思いきや、「んじゃ一番乗りってことで」と早々にポテチを摘んでいた。
それでこそ我等がリーダーだよ。
俺も軽い空気で話したいから、二番乗りでポテチを摘み、口に放る。
美味し美味し、俺の大好きなコンソメ味。激美味し。
片手に弁当を持ちつつ、ポテチを頬張る俺は調子に乗って弥生にキットカットプリーズと手を差し出す。
「おまけで二個つけちゃう」
ウィンクしてくる弥生に、
「あらやだ」
おまけは女子高生の大好物よ、と俺。
「あっれー女子だっけ?」乗ってくれる弥生に、「今の気持ちは圭子なの」と笑いながら返した。
すっかり本調子で乗る調子ノリに弥生は笑声を零し、いつものケイが戻ってきたね、と弥生は肘で小突いてくる。
あたぼうよ。
いつまでもウジ虫田山じゃつまんないだろ?
俺は乗ってこその田山だもの! 不良相手でも乗るよ!
……恐い相手には心の中限定で。
支えてくれる皆のおかげで随分立ち直れているし、本調子にだってなるさ。