青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
あからさまと羅列されている文字から『は』を選択肢、スクロール。
忌まわしき“日賀野大和”という文字にゲンナリしながら、俺はコールボタンを押した。
嫌に心臓が鳴る。ついでに手汗も滲んでくる。
くっそー、こんなにも緊張した電話、初めてだぞ。
できることなら出ないでくれよ、ひが『よお。プレインボーイ』
ガッデム!
普通に三コールで出やがったよこいつ!
「お、お疲れ様です。田山ですけど」
今大丈夫ですか?
努めて平常心で相手に言葉を掛けると、『わーってるって』言わなくても分かると用件を言う前からなんか納得された。
え、まさかお前、この電話がなんの電話か察しているってヤツ? 日賀野はエスパー? いやいや日賀野がエスパーでも全然驚かないけどさ!
『ったく、電話なんざまどろっこしいぜ? プレインボーイ。直接舎弟になる決意をしたって言えばいいのに』
……、日賀野はエスパーじゃない。ただのジャイアンだったようだ。
ふっ、それこそ分かっていたさ。
お前さんがこのネタで弄くるの大好きってことくらいっ…、はぁあ…、電話切りたい。胃が痛んできたよ、俺。
「残念なことに決意する日は無さそうです。ただえーっと、日賀野さんにちょっとお話があって」
『口振りからしてクズに頼まれた電話ってところのようだが、んー、どうするかな。聞いてやってもいいが、クズ関連だとなぁ』
ちなみにこの携帯、ボリュームを最大にしているのでスピーカーフォンにしてなくても教室にいるメンバーには聞こえていたりいなかったり。
「だっ。誰がクズだ!」
握り拳を作るヨウが腰を上げて怒りに震えている。
どうどうと宥めているハジメや弥生を尻目に、
「お話くらい聞いて下さいよ」
俺と貴方の仲じゃないですか、なーんてヤケクソにほざいてみた。
俺は日賀野相手に頑張ってみた。
そしたら日賀野、『そうだな』俺と貴様は舎兄弟(仮)だもんなー、と機具越しに含み笑いを零してくる。
……ええいっ、負けるな俺! 相手に流されたら泣きを見る! 今も見ているけど!
「そうですねー」
日賀野さんとは舎兄弟(仮)くらいにはなれそうですねー、と強気に勝気に返した。
どうでい、言い返してやったぜチク「イヤっすぅうう!」
刹那、後ろから舎弟に抱きつかれて俺は前のりになった。
「うわっち!」悲鳴を上げる俺に、「酷いっすよぉお!」キヨタがギャンギャンワンワン喚いてくる。
「ケイさんっ。俺っちと舎兄弟ゆぅううたじゃないっすかぁああ! ゆぅうたじゃないッスかぁああ! アニキィイイヒドィイイイ!」