青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
◇ ◇ ◇
昼休みの体育館裏はとても静かだ。
のんびりのほほんとした空気が流れている上に、爽やかな風がさわさわ。
暖かい日差しがぽかぽか。
眠気を誘われるくらい平穏な空気、青々とした空の下で食べるメシは格別に美味しい。
うん、格別に美味しいよ。
今日の弁当の中身、俺の大好きなコロッケだし、あー、幸せ。超幸せ。
「ハジメのヘタレ根性なし! どーして女の子に言い寄られてるの?! 馬鹿! 信じらんない! 断りなさいよ!」
「ぼ、僕は言い寄られてないから! 質問されたことに答えただけだしっ。そういう弥生だって、見境なく男に愛想振ってるじゃないか!」
………。
ふっ、俺の頭上で罵詈讒謗(ばりざんぼう)が飛び交っている。
でも、ま、平和だねぇ。
そう思いたい、ああ思いたいとも。
真昼間からカップルの痴話喧嘩を耳にしても、これはいつものことなんだ。
平和なんだぞ。超平和なんだぞ。
「なによ、ヘタレじゃないって言うなら私のことを抱いてみなさいよ!」
ぶはっ!
俺は食べていたコロッケを噴出しそうになった。
や、弥生、俺等の前でなんてことを。
恥じらいはないのか、恥じらいは!
……嗚呼、平和って何だっけなぁ。
「な、なっ…ッ。弥生! そういう気もないくせにとんでも発言は控えてもらいたいね! 僕だって男だ。その内、泣きを見るのは弥生だから!」
……あっらぁ、今、お何時?
うん、お昼だね。
俺の腕時計は正午過ぎですよーって教えてくれてるんだけど。
お二人さん、まだお子さまは起きている時間だぞ。
お母さん方に聞かれたら白眼視される会話だぞ、おい。