青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「へええ、抱けるの? ヘタレハジメさまが私を? 逆に私が襲っちゃいそうだけどね!」
てか、あんた等幾つ? 高校生だろーよ。
「言ってくれるじゃないか弥生。その内、マジで襲うよ。マ・ジ・で!」
あのなぁ二人とも。
現実を見てから、そういう発言はしろっつーの。
一夜の過ちを犯した事後をちゃーんと考えないと、追々泣きを見るぞ。
いやマジな話。
性行為っつーのは、保健で習うように軽はずみでやっちゃなんないんだって。
身近に脱童貞してる奴等がいるけどさ、いちゃうけどさ。
それに何よりさ、俺等の前でそういう喧嘩は…、しかも…、
「なあ弥生。ハジメ。俺、退いた方がいい感じ? 俺、邪魔だろ?」
俺を挟んで喧嘩するのはやめてもらいたいんだけど。
重々しく溜息をついた俺は弁当を太腿の上に置いて、頭上で痴話喧嘩をしている不良二人を右左交互に視線を送ると、
「退こうか?」
お二方に質問を投げ掛けた。
即答で「絶対に」「駄目!」という二つの声。
お互いに視線の火花を散らすと、フンッと鼻を鳴らし、そっぽを向いて腰を下ろす。
「ハジメのバーカ」「馬鹿で結構だよ」「ヘタレ」「勘違い女」「根性なし」「分からず屋」「むっつりスケベ!」「それは聞き捨てならないんだけど!」
左右の鼓膜が別々に悪口(あっこう)を受け止めて嘆いてる。
俺の鼓膜が勘弁してくれよ、なーんて泣いてる。
分かるぞ、鼓膜。
本体の俺が一番勘弁してくれって思ってるんだ。お前の気持ち、よーく分かるぞ。
ゲンナリしながら俺は食事を進める。
ドンマイ俺、座る位置が悪かったんだよな。