一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「うぅ~……」


こんな風に泣くとか、子供だな。
そう思っても涙は止められなくて、ただ俯いて歩いていた時。

ポスって、何かをかぶせられた。

顔を上げて、それがキャップだって事に気づく。


もしかして――。

呆れちゃうけど、そんな期待をして見上げた先にいたのは……櫻井だった。
スーツじゃなくて、あたしと同じ制服を着た、櫻井だった。


「なんで……」
「ほら、咲良、こないだキャップが欲しいとか言ってただろ?
さっきまで友達と色んなショップ回ってたんだけど、このキャップ咲良に似合いそうだったから。
で、買って帰ろうとしたら、咲良がいたから」
「……キャップ?」
「くるみパン食べながら、キャップが欲しいって言ってたから」
「違うよ、あたしが言ったのはギャップ……聞き間違えてるし」







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