一途に IYOU〜背伸びのキス〜
少し前、ギャップが欲しいって呟いたのを聞き間違えたんだろうけど……。
わざわざキャップを買ってきちゃう櫻井に、思わず笑う。
櫻井はそんなあたしを見て、困り顔で微笑んだ。
「こんなところで会うなんて運命かと思ったんだけど……まさか泣いてるとは思わなかった」
「……泣いてない」
「そんな顔して嘘つくなよ。
何かあった? ……どうせ、あいつの事だろ?」
「聞き間違えは多いくせに、勘だけはいいんだね」
「だって、咲良が落ち込んだり喜んだりするのは、あいつに関係する事だけだから。
……悔しいけど。あ、おい。咲良」
無視して歩き始めると、櫻井が後ろからついてくる。
「咲良、なにがあったんだよ。
おまえ、今まで落ち込む事はあっても泣いた事はなかっただろ?」
「……別に」