一途に IYOU〜背伸びのキス〜
「咲良……」
「いいから、ほっといてってば……っ!
櫻井にしてもらいたい事なんかないんだから!」
「じゃあ! せめて泣き止めよ!」
「あたしだって泣きたくて泣いてるんじゃないもん!」
大きな声を出した櫻井に、負けないくらいの声で言う。
周りから視線が集まってたけど、そんなのもう気にならなかった。
「しょうがないじゃん……。
もう、我慢できないんだもん……」
椋ちゃんへの気持ちの大きさだったら、誰にも負けない。
それだけは自信がある。
パパが伝え続けたみたいに、あたしだってそうしたい。
椋ちゃんの傍で。
けど……。
あたしは、きっとパパみたいに魅力がある人間じゃない。
伝え続ける事しか知らないだけの、叫び続ける事しかできないだけの。
ただの、子供だ。