一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「……もう、無理…っ」


ずっと、我慢してきたから。
ずっと、気付かないふりして、強がってきたから。

たったひとつ、石ころが落ちただけで、全部が決壊する。
ガラガラ音を立てて、崩れていく。

今まで積み上げてきた想い、全部が。


ポスって、かぶせられたキャップ。

次の瞬間には、ぐって腕を掴まれて、抱き締められてた。


「俺、今日から本気でいくから」


櫻井の胸から、直接声が響く。

抵抗するわけでもなく、抱き締め返すわけでもなく。

あたしはただ、泣いてた。



櫻井の腕の中は、少しきつくて……あったかかった。











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