一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「いや。正直に言うと、葉山くんの事が気になってな。
もう、諦めたのか?」


そんな事だろうとは思ってたけど。

あたしが椋ちゃんの部屋に行かない事を、パパがずっと不思議がってたのは分かってた。

だって、一緒にご飯食べるたびに、聞きたそうな感じだったし顔にもそう書いてあった。
パパも背中じゃものを語れないタイプの男だ。


「あたしの一方通行でも、迷惑なんだって」
「……それ、葉山くんが言ったのか?」
「言わなくても分かるよ。
あんな顔して、謝られたら……あたしだって分かる」



『……ごめん』

そう謝った時の椋ちゃんの苦しそうな顔が、今でも頭から離れない。


なによりショックなのは。
椋ちゃんにそんな顔させたのは、あたしだって事だ。







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