一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「咲良……」
「あーあ。あたしが男で椋ちゃんが女ならよかったのに。
そうすれば、会社の跡取りとしての地位と財産を利用して、椋ちゃんをお嫁にこさせたのに。
パパみたいに」
「咲良! 人聞き悪い事を言うのはやめなさい!
パパとママはちゃんと愛し合って……っ」
「――あたしだって!」


パパがあたしを可哀想な目で見るから。
ショックなんか受けてません!ってアピールするために、からかったのに……。

いつの間にか、感情的になってた。
止められなくなってた。

今、ここで言葉にしたって、どうにもならないのに。


「あたしだって……椋ちゃんと、ちゃんと想い合いたいもん……!

想い合って、ずっと一緒にいたいもん……っ」



ツラそうな顔して謝るなんて、ずるいよ。

『ごめん』なんて、ずるい……。


そんな顔するほど迷惑してたなら、ちゃんと言ってくれればよかったのに。



椋ちゃんのバカ。






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