一途に IYOU〜背伸びのキス〜
「咲良……」
「パパのバカ! パパの会社の株なんか暴落しちゃえ!」
「縁起でもない事言うなっ! あ、こら! 咲良!」
思いっきり八つ当たりしてから、リビングを出る。
洗面所で、泣き出しそうな顔を冷たい水で洗ってから、急いで身支度をすませる。
一度感情的になっちゃうと、意識して動いていないと、すぐにめそめそしちゃうから。
「行ってきます!」
靴をはきながら言って玄関を出ると、門の前に立ってた櫻井と目が合う。
「……おはよ。って、なに?」
「前髪、ピンで留めたまんま」
「え、あ……ホントだ」
苦笑いした櫻井に指摘されて触ると、顔を洗うときにつけた、クリップタイプのピンがついたままで。
「ホントに女子高生かよ」って笑う櫻井に返した笑顔。
作り笑いしたせいで、頬がひきつってた。