一途に IYOU〜背伸びのキス〜
障害物競走で使う予定のネット、結構大きくて、しかもかさばるし。
前がよく見えなくてよろよろ歩いていたら、緑色で覆われてた視界が急に明るくなった。
「どこ持ってけって?」
ネットを担いだ櫻井が聞く。
「体育倉庫でいいと思う。
当日使うモノだから、会議室持って行っても仕方ないし」
「了解」
重たいモノを持ってる時とか、一人じゃこなせない量の仕事を頼まれてる時とか。
櫻井はあたしが困ってる時、必ずと言っていいほど助けてくれる。
それはもう、センサーでも持ってるんじゃないかって疑いたくなるレベル。
みっちゃんに言わせれば、「それだけ、いっつも咲良の事見てるって事じゃない?」って。
「怖いよね、ストーカーみたいで。ホントになんか仕掛けられてたらどうする?」とも言ってたから、苦笑いしたけど。
……あとから不安になって、カバンの底とかに盗聴器とかないかこっそり調べたのは、櫻井には内緒。