一途に IYOU〜背伸びのキス〜
ばいばい、椋ちゃん。
「椋ちゃん……っ!」
背中を見つけたら、どう声をかけよう。とか。
嫌な顔されたらどうしよう、とか。
色んな不安があったけど、走るスピードは落ちなかった。
そして、椋ちゃんを見つけた途端、自然と名前を呼んでた。
考える暇もないくらい。
まるで、条件反射みたいに。
椋ちゃんのマンションまであと少しの、住宅街。
しん、とした中響いたあたしの声に、椋ちゃんがゆっくりと振り返って……驚いた顔をした。
一度立ち止まってから、息を整えて一歩ずつ近づく。
縮まっていく、椋ちゃんとの距離。
椋ちゃんの近くにいる。
それだけで、感情が溢れ出す。
溢れ出すくらい、気持ちが満たされる。