一途に IYOU〜背伸びのキス〜
椋ちゃんが、ふっと笑う。
あたしの大好きな顔で。
「社長には有能な部下が大勢いるから。何の問題もないだろ。
咲良には想像もつかないだろうけど、社長は優れた経営者だから」
「なんかそうらしいね。
……あたしには、ただの娘が大好きなダメパパにしか思えないけど」
「そういう面を否定はしないけどな」
他愛ない会話なのに……。
相手が椋ちゃんってだけで、全然違う。
他の誰にも感じない気持ちを……椋ちゃんだけがいっぱいにする。
「椋ちゃん」
「ん?」
「あたしね……」
邪魔するみたいなタイミングで鳴ったのは、あたしのケータイだった。