一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「あたしの事、嫌いって言って」
「嫌いって……咲良、俺は――」
「気持ちがおっきくなりすぎて、自分じゃ終わりにできなくて……。
椋ちゃんが終わりにしてくれないと、あたし、また追い回して迷惑かけちゃうから。
だから……、お願い」
「咲良……」
「椋ちゃんに迷惑かけるのは……っ、あたしもツラいから。
お願い。椋ちゃん……」


もう、迷惑かけたくない。
好きだからこそ。


ツラそうに顔をしかめた椋ちゃんを見つめながらお願いしたけど……。

待っても、何も言ってもらえなかった。


苦しそうな顔をした椋ちゃんは、ただあたしを見つめるだけ。


“優しい椋ちゃん”は、あたしを傷つける言葉が言えずにいる。

最後まで、あたしを傷つけないように黙ってる。










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