一途に IYOU〜背伸びのキス〜
『とにかく、帰ってきなさい。
ママがキッチンで張り切ってる』
「……またパン?」
『パンとビーフシチューだそうだ』
「分かった。もう少ししたら帰るよ」
ケータイをポケットにしまって、視線を道路に戻す。
どんどん通り過ぎていく、車の大群。
それをぼーっとして眺めていた時。
「……あれ?」
その中に、椋ちゃんの車が見えた気がした。
白いステーションワゴン。
よく走ってる車だけど、咄嗟に、歩道橋の手すりに手をかけて顔を出す。
……けど。
歩道橋の下を覗こうとしたのと同時に、後ろからすごい力で抱き締められた。
っていうより……抱き寄せられた。