一途に IYOU〜背伸びのキス〜
「痛かったです。あたしは……子供だから。
椋ちゃんの冷たい態度があたしのためだなんて気づかなかった。
だから、痛かったし苦しかったです」
そう打ち明けると、須田さんはじっとあたしを見てから言う。
「確かに子供よね」
「は?」
「コレ、どうしたの? ファンデで隠したつもりかもしれないけど、落ちて薄く見えてる」
須田さんの指先が指したのは……キスマーク。
昨日、椋ちゃんがつけた印。
苦笑いすると、須田さんはふぅて軽く息を吐いた。
「色々不安なのは分かるけど、もっと考えて行動した方がいいんじゃない?」
「何がですか?」
「こんなオフィス街で、制服でどうどうと待ち合わせなんて、ありえないでしょ。
何歳差だろうと、本人同士が真剣ならいいと思う。
でも、社内や取引先に、そんな風には見てくれない人だってたくさん……」
「ああ、それなら分かってるから大丈夫です」