一途に IYOU〜背伸びのキス〜
なんだ、そんな事か。
そう思って言うと、須田さんが顔をしかめる。
「分かってるって……」
「制服とスーツの組み合わせがおかしいって事なら、イヤってほど思い知らされてますから。
今日はパパに書類を届けなくちゃだったから来たけど、用がない限り、あたしは椋ちゃんの会社には近づくつもりはないです」
「……随分、割り切ってるのね」
「だって、椋ちゃんの迷惑にはなりたくないから。
もし必要なら、椋ちゃんに話しかけられても他人のフリだってする。
椋ちゃんの会社での立場を守るためなら、なんでもします」
どうにか距離が縮まらないかって、ずっと考えてきた。
せめて、外見だけでも大人っぽくなれないかな、とか、制服が邪魔だな、とか。
――でも。
今のあたしには、どうする事もできないから。
背伸びするばかりじゃなくて、あたしはあたしにできる事をしようって。
そう思う事にした。
椋ちゃんが、今のあたしを受け入れてくれたから。