一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「まさか社長の娘だったなんて……そりゃあ葉山さんもなかなか手が出せないわけよね。
私はてっきり、転勤の話があるから、好きでも突き放してるのかと思ってたけど……そういう理由があったのね」
「え……え、転勤?!」


呟くみたいに言うから、一瞬、聞き過ごしそうになったけど……。
須田さんは今、確かにそう言ってた。


「転勤って……椋ちゃんが?!」


詰め寄って聞くと、須田さんはあたしの勢いに驚きながら頷く。


「そう。少し前からそういう噂があるの。
県外に新しく支店を作るから、その時のスターティングメンバーとして収集されるって。
言っておくけど、優秀な証拠よ」
「県外に収集……」
「知らなかったの? てっきり知ってるものだと思ってたけど……」
「知らない……。だって椋ちゃん、そんな事一言も言わなかった……」




< 208 / 342 >

この作品をシェア

pagetop