一途に IYOU〜背伸びのキス〜


『だから言っただろ? 俺は本気で考えてるって。
気持ちの大きさに差があるなんて事、ないから』
『あ……』


椋ちゃんの部屋で、自分が言った事を思い出す。

“あたしの気持ちの方が大きすぎるから”

そんな事を言ったから。
椋ちゃんはそれを違うって教えてくれるために、わざわざこうしてきてくれたんだ。


それが分かって……ぶわって嬉しさが溢れ出して、椋ちゃんに抱きつこうとした時。
沈黙を守っていたパパが言った。


『結婚なんて、軽く口に出すもんじゃないぞ、葉山くん』
『十分わかっているつもりです。
その上で、自分には咲良さん以外考えられないんです。
……社長には、バレてるかと思いますが、随分前から咲良さんだけが自分にとって特別だったので』
『そういえばパパ、椋ちゃんの気持ちに本当に気づいてたの?』


バって振り向くと、パパは困り顔で微笑んでた。




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